SSブログ

ローフリクション シンポジウムin福岡:無事終了しました [クリニック外での出来事]

 こんばんは、宇佐矯正歯科クリニック松成です。

 ホームページでは告知していたのですが、7月21日(海の日)にメーカー主催のシンポジウムにて講演をしてまいりました。どのようなシンポジウムかといいますと、歯科矯正治療で用いられるマルチブラケット装置の治療についてのシンポジウムでした。「マルチブラケット装置」とは、歯科矯正の中心となる装置で個々の歯に「ブラケット」という器具を接着してワイヤーの弾性で歯列を整列させる装置です。「ニコッ」としたときに見えるあの装置のことです。金属製の「ギラッ」としたものやセラミック・樹脂製のクリアな目立たないもの、歯列の内側に装着する「人に見えない装置」まで様々なタイプのマルチブラケット装置が存在します。

 このマルチブラケット装置、実は開発されてから100年近くの歴史を持つ装置です。この数年(特にここ5-6年でしょうか)ですが、マルチブラケット装置による治療においてブラケットとワイヤーを固定する際に低摩擦の環境(ローフリクション)を作る事で
 1.歯の移動が早くなる
 2.歯の移動に伴う痛みが減少する
などの現象が生じることが非常に注目され、矯正歯科業界の中でも常に話題となっていました。歯の移動が早くて痛みが少ないなんて良いことずくめです!中にはこれら以外の現象として
 ・歯を抜かずに治療ができる
 ・付加的な装置(歯列の拡大装置やヘッドギアなど)を使用しなくて済む
など、治療する側としては「ほんまかいな?」と思われる様な効果を謳う装置もあります。私のクリニックでは開業以来、そのシステム・装置を現在まで使用して来ていましたので、その装置の実際に関して講演を行ってきました。

 そのシステム・装置は、先ほど触れた「・歯を抜かずに治療ができる・付加的な装置(歯列の拡大装置やヘッドギアなど)を使用しなくて済む」というような内容を患者向けのパンフレットやメーカーホームページに記載してあったりとかで、僕自身はその辺の内容は患者さんには特に説明しないようにしていました。こんな都合の良い情報ばかり患者さんの目に入ってしまい、後で治療の内容が制約されてしまっては大変です!「歯を抜かない、他の装置を使わないんじゃないんですか?」なんて後で攻め立てられてはたいへんですよ!
 では、なぜ私がそのシステムを開業と同時に採用したかというと、勤務医時代に何例かの症例を体験する機会があったのでそのとき強く感じたのが
 ・治療に係る時間(来院された際の処置時間)が非常に短縮できる
 ・歯の移動がやはり早く達成される
だったのです。この2点が非常に印象深く、採用したのでした。今も、この2点のメリットに関しては漏れなく患者さんには説明させていただいています。


 私のクリニックも気づけば開業して2年半ほど経過しました。これまでの治療を終了した患者さんを振り返って、果たして本当にその装置の利点が発揮されているのかを検証・考察した内容をシンポジウムで発表してまいりました。その要旨ですが、大きく

 ・歯の移動が早いことで治療期間の短縮されることと、痛みの減少(私の客観的評価ですが)は認められるため、患者さんには装置の利点として充分勧められる。
 ・そのシステムを利用したから「非抜歯治療ができる」「付加的装置は使用しなくて済む」などはこれまでの使用結果を振り返ると考えられない。装置の都合の良い面・うわさ「非抜歯治療ができる、付加的装置は使用しなくて済む」ばかりが商業的に先走ってしまい、患者も術者もそこに捉われて個々の患者の治療の目標・本質を見失ってしまうことがあってはならないし、あるとしたら非常に問題である。

 という内容でした。症例を交えて技術的な細かいことも織り交ぜながら私の考えを述べさせていただきましたが、私が一矯正歯科医として最も述べたかったことは最後の部分です。装置の利点・効果が中心に治療計画の設定が進んでしまうと、治療の本質を絶対に見失ってしまうと思います。「この装置では歯を抜かずに治せます、余計な装置は一切使用しません」 では非常に危険ではないでしょうか?問診・検査によって治療目標を立て、その目標に向かうにはどのような歯の移動が必要か、そのためにどんな装置が必要かを組み立ててゆくのが私たち矯正歯科医の本分だと思います。「この装置ならこんな風に治せます」で「エイヤッ」と画一的な治療計画を立ててしまうようなことはあってはならないと思うのです。
 歯科矯正の治療装置は様々な装置が多数存在します。各々の装置の利点欠点を充分に理解し、それらを治療目標達成するに当たりどの装置をどのように使用すべきか取捨選択し、患者さんをゴールに導くのが私たちの役目なのです。術者の装置・システムの過信で、その結果患者さんに不利益を与えることが一番あってはならないことです。


 講演の内容としては、装置の批判(メーカーの商業批判?)めいた内容となってしまったのですが、治療期間短縮や痛みの減少は実際に体験していますので、今後もその利点を患者さんに勧めながら今のシステムを継続して使用し続けるつもりです。総合的に見れば、おそらくローフリクションのシステムは今後の歯科矯正治療の中心となるシステムとなってゆくのではと考えている次第です。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。